第13回「埼玉支部の集い」は2010年5月22日(土)午後1時より埼玉教育会館において56名の参加を得て開催されました。
★第1部の総会は原多喜子さんの進行により、校歌斉唱に始まり、笠原支部長の挨拶が続きました。次に総会議事に移り、支部長司会のもと第1号議案・第2号議案・第3号議案が提出され、それぞれ無事承認されました。なお、第2号議案の2009年度収支報告のあと、監事よる監査報告がありました。
★第2部では眞田雅子学長による講演『出会い―エリザベス・P・ヒューズと安井てつ』が行われました。講演の要旨は次のようなものです。
☆東京女子大学第2代学長であった安井てつ先生は1897年から3年間文部省留学生として家政学・教育学を修めるためケンブリッジ大学の女子トレーニングカレッジに学び、そこでエリザベス・Pヒューズ初代女子師範部長と出会い、強い影響をうけられた。
☆当初、留学間もない安井先生はクリスマス休暇をヒューズ家で過ごすように誘われ、ショッピングに2人で出かけ、ヒューズ先生から「何かほしいものがあったら買ってあげる」と言われたりして家族のように接してもらえ、後に安井先生をして「かくまで愛せられたることなし」とまで言わしめるほど、大切に親身な扱いを受けた。
またヒューズ先生は安井先生に英国留学の目的で重要なのは、ただ本を読んだり、レクチャーを聴くことだけではなく、“多くの人と接し、よい関係を築く”ということだと教えられる。
☆安井先生はこのような留学生活を送るうちに、日本では考えられなかった自分の考えをしっかり述べる力が身につき、ヒューズ先生も安井先生の力を認め、お互いに信頼と尊敬を懐き合うようになる。そしてヒューズ先生は「日本についてもっと学ぼう」と思うようになり、安井先生は大嫌いだったキリスト教に興味を持ちはじめ、後に熱心な信者となり、日本へ帰国後、本郷教会の海老名弾正牧師から洗礼を受ける。瀬戸内寂聴氏も「祈りの原点は安井先生から授かった」と言っておられたとのこと。
☆また英国では規則が少なく自由なのに人々に礼節がよく守られていることを知り、それがキリスト教の信仰によるものだと確信する。
☆留学最後の年1900年パリ万博で新渡戸稲造と会い、“教育とは祈りを持ってなされるべき神聖な仕事”という共通の思いを確認しあう。このことが後年東京女子大学設置理事になるように新渡戸稲造から要請されることにつながっていく。
☆こうして3年間の留学を終えた安井先生は自身でも言われているように、“堅苦しい人付き合いの悪い人柄”から“未知の人ともよくつきあう気性”をもたれるようになる。女子大の学監となられてからも生徒たちに「元気?」などと気軽に声をかけられていたとのこと。
☆また特筆したいことは、安井先生はヒューズ先生やキリスト教との出会いによって“リベラルな大学教育とは“ということを充分に体得されて帰国されたということと、東京女子大の基礎を作ってくださったのは、安井てつ、ヒューズのお二人の信頼関係によるものであるということだ。
☆お話の最後は、安井先生が学ばれた前出のケンブリッジ女子トレーニングカレッジが1985年にヒューズ・ホールというカレッジになったということである。これも安井先生とヒューズ先生の特別な関係によるところが大きく、そして2007年以降東京女子大から学生たちがこのカレッジの教養講座に参加している。そしてケンブリッジで安井てつと出会えるチャンスになっている。
講演の最後は、安井てつ先生の留学中の貴重な写真や、眞田先生が撮影されたヒューズ・ホールの現在の様子と、そこでの東京女子大の生徒たちの写真がスクリーンに映し出されました。
在学中もその後も、あまりよく知らずにいた安井てつ先生の足跡を、今日の眞田学長のお話ではっきりと認識できました。
★第3部茶話会は小野美貴さんによって進められました。眞田学長もご参加くださり、ケーキとコーヒーをいただきながら和やかな歓談のひとときを過ごしました。新規参加の3名の方々のご挨拶があり、支部にも少しずつ新しい風が吹き、また古くからの会員の方々との交流も深まりました。
卓上には役員の庭で咲いた小さな花や、折り紙の会制作のくすだまが飾られました。また部屋の一隅では、手芸の会の作品が展示即売されました。 <NH>