今回のテーマは「美術館が街を変える」
金沢21世紀美術館館長・蓑 豊氏の講演でした。
蓑館長のご経歴は「
金沢21世紀美術館」のHPに詳しいのですが、
後援財団理事長の石原さんとは、1977年高島屋店次長だった石原さんが「クレマンソーの香合コレクション」を企画なさった時、当時モントリオール美術館にいらした蓑さんと交渉して以来のお付き合いだそうです。
美術館と聞くと「静」のイメージですが、蓑さんのお話は「動」そのものでした。
その内容は・・・
『アメリカで奨学金を得て教育を受けたので、アメリカに東洋文化を紹介することに長い間携わってきた。
例えばシカゴ美術館の東洋美術ギャラリーの一部屋は建築家安藤忠男氏が設計し、アンドウ・ギャラリーとして氏の代表的な建築物となっている。
安藤氏のPASSIONは「夢を持てば仕事は成功する」というもので、自分のPASSIONと通じるものがある。
日本の美術館は公営のものが多く、運営費の90%は税金によっている。
その入場者の平均は5万人で経費は勿論赤字。運営費の10%程度しか稼いでいない。「21世紀美術館」創設時、運営費の60%は稼ぎたい、年間入場者予想30万人と発表した。人口45万人金沢市で30万人を呼ぶことが出来るのだろうか。
方略として考え出したのが、金沢市内の全小・中学生を無料招待すること。
4ヶ月の間に4万人の子供達が美術館に来た。
そしてその子供達に「もう1回券」を2枚ずつ渡した。
期限をつけたところ、その子供達が親を連れてきた。
1年間で戻ってきた「もう1回券」は7000枚。
どこかの国の調査が、子供の時に美術館へ行った人は、100%子供を美術館へ連れていっている、という結果を示している。
子供に美術館へ行く習慣をつけることは大切なことである。
その他にも企画展等でたくさんの人を集め、その結果1年目は入場者数157万人を達成。内訳は40%が県内、60%が県外からの客だった。2年目は120万人の入場者を集め、経済波及効果は328億円と地元紙に報じられた。200億円の建設費を含んでいるとはいえ、120億円余は金沢の町に落とされたことになる。地元の大手デパートの売上も上がっている。
その他、集客の戦略として、閉館時刻を夜10時にした。
「タレルの部屋」は屋根が無く、空と天井が一体化して夜の景色は素晴らしく、ちょっとしたデートスポットになっている。
一度入場するとその日にうちなら何度でも入場できるシステムになっている。
建物の設計にも工夫がなされ、入り口は4箇所、フリーゾーン(入場料不要のところ)も広く、中が見えるようになっている。ただし、肝心ところを見るには、ちゃんと入場料を払わないとならない。」
と、これだけのお話をされた後、実際の写真を見ながら、さらに具体的に説明された。
金沢の駅から美術館にいたる道のところどころに設置された彫刻。
来年の高校の数学の教科書に載るという円形の中に四角が林立する建物。
来館者を圧倒するというプールの芸術。
子供に人気があるという、自由に遊べる体験型作品。
作家が半年間実際に製作している公房。
740平米の市民ギャラリーはコンベンションセンターとして貸出し、全国から人々が集まってくる所となっている。
子供のうちに美術館で感動を教えることが大切である、と今では市内の全小学校の4年生(4年生が最も感動に適している年齢だそうです)を招待している。
来週はルーブル美術館の館長、来月はニューヨークのグッゲンハイム美術館の館長が来訪される由。
美術館のかび臭いイメージを払拭された1時間半でした。
私も「21世紀美術館」に行きたくなりました。
埼玉支部ツアー、企画しますか?